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初めての相続税|申告の流れと期限をやさしく解説

税理士 大河原真吾

税理士 大河原真吾

東京税理士会麴町支部 登録番号:153981

この記事の執筆者:税理士 大河原真吾

 一般家庭の相続税申告とオーナー経営者の事業承継・相続税申告に豊富な経験を持つ。特に土地の相続税評価額の減少と事業承継のスキーム構築を強みとする。お客様の意向を最大限に尊重したオーダーメイドなサービスを提供し、適正な料金でお客様に寄り添うことをモットーとする。

 相続は、大切な方を亡くされた悲しみの中で、さまざまな手続きを進めなければならないことから、「知らないうちに申告期限が間近」といった事態に陥りやすいものです。

 この記事では、初めて相続税の申告に直面する方のために、申告の期限と全体的な流れ、そして期限までにスムーズに終わらせるための秘訣をわかりやすく解説します。

1. 相続税申告の「期限」を正しく知る

 相続税の申告と納税の期限は、「相続の開始があったことを知った日(原則として被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内」と法律で定められています。

 この「10ヶ月」は意外と短く、特に期限が過ぎてしまうと、本来受けられたはずの特例等が適用できなくなったり、加算税や延滞税といったペナルティが課されたりする、納税者にとって非常に不利な状況を招きます。

(1) 正しい申告期限の数え方

 原則「亡くなった日」を起算日として翌日から数え始め、10ヶ月後の応当日の前日が申告期限となります。

例: 死亡日が令和4年6月5日の場合

  • 起算日:令和4年6月6日
  • 10ヶ月後の応当日:令和5年4月6日
  • 申告期限:令和5年4月5日

 もしこの期限日が土日祝日などの休日に当たる場合は、その翌日が期限となります。

 ただし、例外として一次相続の遺産分割完了前に二次相続が発生しているような場合や、相続人以外に対する遺贈があった場合等、原則と異なる日が申告期限となる場合もあります。

(2)申告期限と納付期限は同じ日

 相続税は、申告書を税務署に提出する申告期限と、税金を支払う納付期限が同じ日である点にも注意が必要です。期限までに申告を完了させ、同時に納税まで済ませる必要があります。

2. 相続手続きの全体像と申告までの「流れ」

 「10ヶ月」という期限までに申告を終えるためには、まず全体の流れを把握し、逆算して計画を立てることが重要です。

最初のステップと期限のある手続き

手続き
期限
備考
相続人の確定と遺言書の確認
早期に
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本などが必要。
相続財産の調査
早期に
すべての資産・負債を洗い出し。名義預金やデジタル資産等を含む為、専門家(税理士等)のアドバイスを受け、洗い出しを行うのが無難です。
相続放棄・限定承認の検討
3ヶ月以内
家庭裁判所に申述。相続放棄や限定承認をすることによる税務上の問題、また、限定承認の手続き等を考慮すると専門家(弁護士、税理士等)のアドバイスを受けるのが無難です。
準確定申告
4ヶ月以内
亡くなった年の1月1日~死亡日までの所得税の申告・納税。
遺産分割協議
10ヶ月以内が理想
相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成。
相続税の申告と納税
10ヶ月以内
税務署へ申告書を提出し、納税する

3. 期限内に終わらせるための「秘訣」

 多忙な日常の中で、これらの複雑な手続きを10ヶ月以内に確実に完了させるための最大の秘訣は、相続に強い税理士にできるだけ早く相談することです。

 相続税の申告は、約9割が税理士に依頼されていると言われています。税理士に依頼することで、以下のメリットが得られます。

  • スケジュール管理の代行:煩雑な手続きの全体像を把握し、期限から逆算した計画と進捗管理を任せることができます。
  • 財産評価と必要書類の収集サポート:納税額に大きな影響を及ぼす不動産の評価や、複雑な必要書類の収集を効率的に進めることができます。
  • 特例等の適用漏れを防ぐ:相続税を大幅に軽減できる一般的には「配偶者控除」と呼ばれている「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」など、税務上の特例等の適用を最大限に実現し、節税効果を高めることができます。

 相続に精通していない税理士も存在するため、依頼する際には、WEB面談等で必ず申告する税理士本人と話して選ぶことが大切です。申告期限の3ヶ月前までには依頼を完了させておくと安心でしょう。

4. 期限後申告の大きな「ペナルティ」

 相続税の申告期限を過ぎてしまうと、納税者にとって致命的な二つの大きなデメリットが発生します。

(1)特例等が適用できない・利用に制約がかかる

 相続税には、納税者の負担を軽減するための特例等がいくつかありますが、期限後申告をした場合、その一部または全部が適用できなくなります。

特例
期限後申告時の影響
配偶者の税額軽減
原則として適用可能(※別途手続きが必要)
小規模宅地等の特例
原則として適用可能だが、適用できないケースもある
農地の納税猶予・事業承継税制
完全に適用不可(期限内申告が要件)

 特に税額を大幅に減らせる「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」は、期限後申告でも原則適用可能ですが、後述の通り「遺産分割が確定していること」が前提となります。

(2)加算税・延滞税の発生

 期限を守らなかったことに対する罰則として、以下の追加の税金が課されます。

ペナルティの種類
概要
税率(一般的なケース)
無申告加算税
期限までに申告しなかったことへの罰則
納付すべき税額の5%~20%
延滞税
期限までに納付しなかったことへの利息
年2.4%(令和7年時点)、納付が一定の期限を過ぎると年8.7%(令和7年時点)部分あり
重加算税
財産を隠蔽するなど悪質な場合に課される罰則(重加算税がかかる場合は、無申告加算税はかかりません。)
納付すべき税額の40%

 申告期限を過ぎると、通常は「無申告加算税」と「延滞税」の二重のペナルティが発生し、本来支払うべき税金に上乗せして納めなければなりません。

5. 期限までに「遺産分割」が決まらない場合の対処法

 相続税の申告期限までに、誰がどの財産をどれだけ相続するかという「遺産分割協議」がまとまらないことは珍しくありません。相続税の申告期限までに遺産分割が決まらなかったとしても、相続税の申告納付は必要となります。この申告のことを未分割申告といいます。

(1) 未分割財産での申告手続き

 遺産分割が未確定の状態で期限を迎える場合、相続人全員の民法上の法定相続分に従って財産を取得したものと仮定して、相続税の申告を行います。

 この「未分割の状態で申告する手続き」をすることで、無申告加算税などのペナルティを回避できます。ただし、この時点では「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった遺産分割が確定していることが適用要件となる特例は原則として使えません。

(2)特例等を適用するための更正の請求

 未分割申告において「申告期限後3年以内の分割見込書」の書類を申告書に添付し、その後、申告期限後3年以内に遺産分割協議がまとまった場合、「分割が確定した日の翌日から4ヶ月以内」に税務署に対して「更正の請求」を行うことで、特例等が適用され税金が還付されます。

 また、申告期限後3年を過ぎてしまった場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出し、税務署長から承認を受けた場合に限り特例等が適用可能です。やむを得ない事由とは、遺産分割にあたって訴訟が起こされている場合等が該当します。この「やむを得ない事由」は、法律で定められていますので、単に相続人間の不和を理由としたものは、認めれません(裁判等になっている場合は除きます。)。また、やむを得ない事由が解消した場合は、その日の翌日から4か月以内に遺産分割をしなければなりません。

まとめ

 相続税の申告は、「相続開始の翌日から10ヶ月以内」という厳格な期限が最大の壁となります。

 この期限をクリアし、かつ税額を適正に抑えるためには、全体の流れを把握し、早期に必要書類を集め、遺産分割を計画的に進めることが必須です。

 特に、特例等の適用漏れやペナルティを確実に避けるためにも、相続税に強い税理士への早期の相談を強くお勧めします。

 弊所は、麴町駅から徒歩1分にあり、相続税申告、オーナー経営者の相続税対策について実績が豊富にございます。また、初回相談60分無料で、WEB相談も可能です。

 相続でお困りの際は、ご相談ください。