相続税における生命保険金の非課税枠~注意点、節税対策としての活用法~
相続税における生命保険金の非課税枠は、賢く活用することで大きな節税効果をもたらす重要な仕組みです。故人が遺した財産…[続きを読む]
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税理士 大河原真吾
東京税理士会麴町支部 登録番号:153981
この記事の執筆者:税理士 大河原真吾
一般家庭の相続税申告とオーナー経営者の事業承継・相続税申告に豊富な経験を持つ。特に土地の相続税評価額の減少と事業承継のスキーム構築を強みとする。お客様の意向を最大限に尊重したオーダーメイドなサービスを提供し、適正な料金でお客様に寄り添うことをモットーとする。
目次
「相続」と聞くと、まだ先の話だと考えがちかもしれません。しかし、日本の相続税の基礎控除額(非課税となる最低ライン)は、2013年の税制改正によって大幅に引き下げられました。
この改正により、首都圏や都市部で自宅を所有している一般の家庭でも、相続税の課税対象となるケースが格段に増えています。
相続税は、「資産がある人が亡くなった後に家族が支払う税金」であり、残された家族の生活や、築き上げた資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、大きな負担となり得ます。
対策は、相続が発生してからでは遅すぎます。このコラムでは、「今日からできる」生前対策から、相続発生後に活用できる特例まで、相続税を減らすための具体的な「節税の工夫」を網羅的に解説します。
相続税の節税対策は、以下の3つの基本戦略に集約されます。
これらの基本戦略に基づき、具体的な対策を見ていきましょう。
節税対策を始める前に、まず行うべきは「現状分析」です。
現状を正確に知ることで、初めて必要な対策の優先順位(節税対策、納税資金対策、遺産分割対策)を決定できます。
相続税における財産の価額は、財産評価基本通達に基づいて評価した金額です。
この評価額を下げる工夫は、最も有効な節税対策の一つです。
現金や預金は額面通り評価されますが、不動産、特に賃貸物件として活用されている不動産は、大幅に評価額が下がります。
現金で所有している財産を、あえて負債(ローン)を組んで賃貸不動産に換えることで、「財産評価額の引き下げ」と「負債による純資産の圧縮」の二重の効果が得られます。
ただし、相続税の負担を軽減させる意図があったと認められ、かつ、時価と相続税評価額との間に著しい乖離があった場合、「不動産鑑定評価」により評価され「財産評価額の引き下げ」について期待できない事となります。
この場合、被相続人自身の使用収益や投資といった目的で取得したと事後に合理的に説明できるか、慎重に検討する必要があります。
また、2025年11月13日(木)開催の政府税制調査会において、一棟賃貸マンションの駆け込み取得と不動産小口化商品の贈与が問題視され今後、財産評価基本通達の改正が行われる可能性があり、動向を注視する必要があります。
何れにしても、専門家のアドバイス等を受けず、独自で実行するのは、避けるべきです。
生命保険金は、「みなし相続財産」として相続税の対象になりますが、以下の非課税枠が設けられています。
例えば、法定相続人が3人の場合、1,500万円までの生命保険金は相続税がかかりません。この枠を最大限活用するように、保険金額を見直すことは、納税資金を非課税で準備できるという点で非常に有効です。
生命保険金の非課税枠の詳しい解説は、下記コラムをご参照ください。
生命保険金と同様に、死亡退職金にも以下の非課税枠が適用されます。
この制度の適用を受けるためには、退職金の支給が死亡後3年以内に行われるなど、一定の要件を満たす必要があります。
生前贈与は、財産を確実に次世代に移転させ、将来の相続財産そのものを減らすための王道です。
贈与税には、年間110万円までの基礎控除があります。この範囲内であれば贈与税は非課税となり、申告も不要です。
2023年の税制改正により、贈与者が死亡した場合、相続開始前7年以内(段階的に延長され、最終的に7年)に行われた贈与は、相続財産に加算されることになりました(これまでは3年)。対策は早期に開始することがより重要になっています。
この制度は、2,500万円までの贈与に対して贈与税を非課税とする制度です。贈与時には税金がかかりませんが、贈与者の相続発生時に、贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算します(贈与時の価額)。
特定の目的に対する贈与には、大きな非課税枠が設定されています。
ただし、教育資金の一括贈与については、一部報道で2026年度の税制改正で非課税措置を終える方向で検討されているとの事です。
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制度名
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非課税限度額
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概要
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|---|---|---|
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教育資金の
一括贈与 |
1,500万円
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30歳未満の子・孫への教育資金の一括贈与。
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結婚・子育て
資金の一括贈与 |
1,000万円
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18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与。
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住宅取得等
資金の贈与 |
最大
1,000万円 |
子・孫へのマイホーム取得資金の贈与(省エネ住宅などの要件あり)。
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配偶者控除
(おしどり贈与) |
2,000万円
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婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合。
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生前贈与と並行して、最も重要となるのが、遺産分割対策と配偶者控除の活用です。
相続税の申告・納税は、相続開始後10ヶ月以内に行う必要があります。しかし、遺産分割協議が整わないと、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの最も強力な特例等が適用できない、または、利用に制約がかかります。
これは、日本の相続税制において最も大きな節税効果を持つ特例です。
一次相続(配偶者の一人が亡くなった時)で配偶者控除を最大限利用すると、残された配偶者の相続財産が大きくなります。その配偶者が亡くなった時(二次相続)には、配偶者控除が使えなくなるため、残された子の相続税負担が重くなる可能性があります。一次相続の分割では、二次相続までを見越した財産配分が不可欠です。
相続税の配偶者控除の詳しい解説は、下記コラムをご参照ください。
被相続人(亡くなった人)が住んでいた土地や事業に使っていた土地を、一定の要件を満たす相続人が引き継ぐ場合に、土地の評価額を大幅に減額できる特例です。
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区分
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限度面積
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減額割合
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主な要件
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|---|---|---|---|
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特定居住用宅地
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330㎡
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80%
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配偶者(特に要件なし)、または同居親族などが相続し、申告期限まで居住・所有を継続
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特定事業用宅地
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400㎡
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80%
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事業を継続する親族などが相続し、申告期限まで事業・所有を継続
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特定同族会社事業用宅地等
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400㎡
|
80%
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一定の要件を満たす法人(不動産貸付業を除く。)の事業の用に供されていた一定の要件を満たす親族などが相続し、申告期限まで所有を継続
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貸付事業用宅地等
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200㎡
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50%
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不動産賃貸業を継続する親族などが相続し、申告期限まで事業・所有を継続
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この特例の適用有無で相続税額が劇的に変わるため、遺言書や遺産分割協議において、誰がどの土地を相続するかを慎重に決める必要があります。
相続が発生した後、相続に関係する所得税の重要な特例と対策があります。
相続や遺贈によって取得した土地や建物、株式などの財産を、相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡(売却)した場合、その財産にかかった相続税額の一部を、譲渡所得の計算上、取得費に加算できる特例です。
これにより、売却益にかかる譲渡所得税を減らすことができます。尚、土地や建物の売却を急ぐと買いたたかれますので、申告期限までの売却が行われたケースはそうありません。ただ相続した土地や建物の譲渡所得税を減らすことができるため、相続税の納付負担を和らげる効果があると言えるでしょう。
被相続人が住んでいた家屋(空き家)を相続し、一定の要件(耐震リフォームや取り壊しなど)を満たして、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です(売却代金が1億円以下である必要があります。)。
同じく、売却益にかかる譲渡所得税を減らすことができます。また、こちらも土地や建物の売却を急ぐと買いたたかれますので、申告期限までの売却が行われたケースはそうありません。ただ、同じく相続した家屋(空き家)の譲渡所得税を減らすことができるため、相続税の納付負担を和らげる効果があると言えるでしょう。
節税対策とは異なりますが、相続税は原則として現金一括で納付する必要があります。
相続税対策は、「どれだけ早く、計画的に実行するか」が成功の鍵となります。
相続税は非常に複雑な税制であり、利用できる特例等も多岐にわたります。特に、不動産の評価や二次相続のシミュレーションには、高度な専門知識が必要です。
最も効果的で円満な相続を実現するためには、相続税に強い税理士とタッグを組み、あなたの家族構成や財産状況に合わせた公正かつ中立なコンサルティングを受けることを強くお勧めします。
今日からできる一歩を踏み出し、大切な資産を次世代へ円満に引き継ぐ準備を始めましょう。
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